この前、フィンランドの全国紙「ヘルシンギン・サノマット」がヴオッコの特集を掲載。ネット版には、インタヴューに答えるヴオッコのビデオもあります。1930年生まれだから、今年85歳。やっぱり年とったけど、なんか表情がいたずらっぽく生き生きしてる。

ヴオッコは、マイヤ・イソラ(1927−2001)やアンニカ・リマラ(1936−2014)などと並ぶ、とても才能あるマリメッコの旧世代デザイナーで、生存している数少ない1人。マリメッコで仕事をしたことはなかったけど、同じ時期に活躍したデザイナーにマリヤッタ・メッツォヴァーラ(1927-2014)もいたけど、去年の末に亡くなって、いよいよ1人になった感があります。スウェーデンや北米でも人気のあるメッツォヴァーラだけど、日本では人気がない。それに比べると、ヴオッコには一定の評価がありますよね。

ヘルシンキ東部のクロサーリという島にある高級住宅地に住んでいるヴオッコ。そこでのインタビューに基づく特集でした。それは、海に面した豪邸。ちなみにフィンランドでは、窓からちょっとでも海が見えると、とたんに家の値段がはねあがります。

マリメッコの創設者、アルミ・ラティア(1912−1979)は、当時巷にあふれていたお花模様が大嫌い。ヴオッコの夫となるデザイナーのアンッティ・ヌルメスミエスを通じて、1952年頃、大学を卒業したばかりの頃のヴオッコを知り、仕事を持ってくるよう言いつけた。そして、ヴオッコに当時人気のあったスウェーデン語系フィンランド人デザイナーの仕事を真似するよう言う。その頃、コピーすることには、今のような問題はなかったんですね。でも、ヴオッコはそれに逆らい、コピーではなく独自のデザイン思考を持って、ミニマリズムな柄をデザイン。即座にそれが気に入ったアルミに、デザインを任されます。もともとデザインではなく、陶芸を学んだヴオッコには、従来のデザインとは異なる視点があったのでした。

ヴオッコの「イロイネンタッキ」の元々の名前は、「キヒラタスク(婚約のポケット)」だったそう。アンッティと婚約中だったヴオッコは、アンッティへのお願いを書いたメモを入れたり、アンッティがラブレターやキャンディ、クッキー、もしかするとダイヤモンドも入れてくれるように、小さなポケットをあちこちにつけたという、かわいいエピソード。でも、おばあちゃん達も買ってくれるようにという営業上の配慮から、「婚約のポケット」ではなく、「イロイネンタッキ(楽しいジャケット)」に変えたそうです。



ヴオッコは、自分のデザインをアヴァンギャルドと言っていて、洋服については、小さく裁断された布ではなく、1枚の布の服を作りたかったと語り、後のコムデギャルソンなどにも通じる考えを持っていたことが窺えます。ヨーロッパの服は、切った布を立体的に構築していくけど、アジア・中東・アフリカなどには1枚の長い布をまとう服装文化があり、恐らくそういったものにも関心を持っていたのでしょう。

暗かった戦後からの脱却を目指して北欧の小国フィンランドで起業したマリメッコは、国際的に認められていき、1960年にはジャクリーン・ケネディがヴオッコ、デザインのワンピースを着て、アメリカで雑誌の表紙に。当時、マリメッコのワンピースを8着持っていたジャクリーヌ。そのうち3着が2000年代始めにオークションにかけられ、2着をヘルシンキのデザイン・ミュージーアムが購入したという後日談があります。

でも、すでに1960年当時、ヴオッコとマリメッコの決別は始まっていて、その年、ヴオッコは夫のアンッティとインド旅行に出発。その後、マリメッコに戻ることはなかったのですが、今もその理由については口をつぐんでいます。当時弱冠30歳だったヴオッコは、その後4年間仕事が無し。1964年になって、「ヴオッコ」という名前の会社を設立して現在に至ります。

その後、没交渉だったアルミとは1度、思いがけずオーストラリアで会ったことがあったそうです。ヴオッコが「お元気?どうしているの」と聞くと、アルミは「まあ、うまく行ってるわよ」と言い、でも続けて「あまりうまく行ってないのは、知ってるでしょ」と言ったそう。

60年代フィンランドでは、ヴオッコのデザインした「ヨカポイカシャツ」が大ヒットし、続いて70年代はアンニカ・リマラの「タサライタ」Tシャツが大ヒット。そして、ニューヨークに進出してお店を出しながらも、実はマリメッコは倒産の危機にあり、アルミは精神的にも経済的にもひっ迫していたのでした。

この春、創設者アルミを描いた映画「Armi lives」が公開され(この映画については、4月4日のブログで少し書きました)、試写会に招待されたヴオッコは、映画を観終わると続くレセプションには出ず、すぐタクシーに飛び乗って帰宅し、一晩中泣き明かしたと語っています。「映画は実際に起きたことを描いているけど、でもそれはアルミではなかった」と言うヴオッコ。アルミと深い確執があり、現在も生々しい記憶と葛藤をかかえているのだなあ。そして少し間を置いて、「マリメッコを去ることがあろうとは、思わなかった」というヴオッコの言葉で、その特集は終わっています。

フィンランドには、「フィンランドの女性は強い」という考え方があり、マリメッコの物語も「強い女性たち」という枠組みで語られることが多く、この特集もその視点から書かれています。でも、アルミの夫で、やはりマリメッコの創設者であるヴィリヨの存在を忘れてはいけないと釘をさすヴオッコ。

マイヤ・イソラは40年近く、プケッティのアンニカ・リマラは20年以上、マリメッコにいたことに比べると、ヴオッコとマリメッコの関係は7年と短い。でも、その間に、今も愛されるピッコロやラッティ、ノッパ、イロイネン・タッキなどを始めとする多数の名作を残したヴオッコ。ドラマを含みながら、高齢になっても明晰な頭脳と感性を感じさせる特集でした。

エスポー市の美術館EMMAで、ビルゲル・カイピアイネン(1915−1988)の展覧会が開かれているので、友人と先日行ってきました。日本では、アラビアの「パラティッシ」シリーズのデザインが最も知られています。というか、他は関心を持たれていないような。

北欧モダニズムや機能主義とはまったく異なる装飾的、寓話的なデザイン。アラビアで大型セラミックのアートワークをたくさん作ってたんですね。同世代だけどシンプル好きのカイ・フランクとは不仲。

『北欧フィンランドのヴィンテージデザイン』には、カイピアイネンの壁紙が載っています。シンボリックで、少しミステリアスな雰囲気の壁紙で、最近のレトロブームでまた人気が復活しています。

138ページには、「どのヒバリが一番美しいか」(左側)


140ページには、「ヒバリたちの夜」3色


うーん、なかなかすごい世界。
みな、EMMAのショップで売っていました。

マリメッコ、「メッツァンヴァキ」の盗作問題は急速に解決に向かっているようだ。盗作されたウクライナ人画家マリア・プリマチェンコは1997年に亡くなっており、マリアの作品「旅するネズミ」の著作権は遺族にあるが、作品はウクライナのデコラティブ・フォークアート美術館が所蔵している。



マリメッコの社長ミカ・イハムオティラはウクライナ人画家の遺族とデコラティブ・フォークアート美術館に手紙を送り、盗作を認めて謝罪。著作権侵害に対して賠償金を支払い、マリアの遺族・美術館と共同で対処していきたいという意向を表明。そこには、フィンランドでマリア・プリマチェンコの展覧会を開くことなどが含まれる。

昨日の報道では、マリアの孫、イヴァンは穏便な解決を望んでおり、弁護士によると、マリメッコが「メッツァンヴァキ」によってこれまでいくらの利益を上げたかなど調査を進めているが、事を荒立てず、比較的少額の賠償金で解決したい意向だという。

また、マリメッコに権利を売るのではなく、マリア・プリマチェンコの作品を使用する権利を与えるという方向で解決への模索が進んでいるようだ。

フィンランドはマイナーな「小国」だけど、ウクライナはそれにさらに輪をかけたマイナーな「小国」。フィンランドはウクライナよりずっと裕福ではあるので、豊かな国の高名デザイナーが、貧しい国の無名アーティストの作品を無断で利用していたという構図を避ける方向で交渉を進めるのは、賢明だと思う。

今日のニュースで大きな扱いを受けたのは、クリスティナ・イソラのデザイン盗作問題。クリスティナは、マリメッコのスターデザイナー、マイヤ・イソラの一人娘。1946年生まれで、フリーのデザイナーとして、何十年にもわたってマリメッコにデザインしている。

彼女が2007年にデザインした、「メッツァンヴァキ(森の人たち)」が、ウクライナ人フォーク・アーチスト、マリア・プリマチェンコの「旅するネズミ」(1963年)にそっくりで、唯一の違いはネズミたちがいないことに気づいたのは、ヘルシンキに住む美術愛好家。



上がマリア、下がクリスティナの作品。



マリア・プリマチェンコは、独学で学んだ画家で、「素朴派/ナイーブアート」のようなスタイルで描く人。

夕方には、クリスティナは談話を発表。それによると母が遺した画集にあったウクライナ人画家の作品からインスピレーションを受け、そのヴァリーションをデザインした。その時は、著作権のことや盗作にあたること等考えていなかった。どうしてそんなことをしてしまったのか自分でもわからないが、その行為を今は恥じ、謝罪するという。

マリメッコの創設者アルミ・ラティアの息子で、デザイナーのリストマッティが、「なぜクリスティナともあろう人が」と驚きを隠せない様子がテレビで映された。

フィンランド航空は、機体に「メッツァンヴァキ」を描いた飛行機を日本などに運航しているが、その絵を消す費用などをマリメッコに請求する考えだという。またウクライナ側は、著作権侵害の訴えを起こす構えでおり、この問題はしばらくメディアを騒がせそうだ。

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